グリストラップの法律や設置義務についてわかりやすく解説

グリストラップの法律や設置義務

グリストラップの設置や排水規定については、各法律や条例で定められています。少し歴史を遡ると、1950年に施行された建築基準法では、第129条により「適切な排水設備の設置」が求められています。建築基準法は、建物の安全性や衛生、快適性を確保するための法律ですが、具体的な基準や数値は明記されていません。

それを補完する形で、1976年に建設省告示第1597号が施行され、飲食店など油脂を含む排水が発生する施設において、グリストラップ(阻集器)の設置基準が明確に規定されました。具体的には、排水設備の近くに油脂分を分離できる設備の設置が義務付けられ、月1回以上の清掃が推奨されています。2010年にはこの告示が国土交通省告示第243号によって改正されていますが、基本的な内容は同じです。

また、各自治体の条例でもグリストラップの設置が義務付けられています。たとえば東京都条例では、飲食店や食堂、食品加工施設や食品製造工場、大規模や調理施設やフードコートなどの複合施設にグリストラップの設置が義務付けられています。これに違反すると、業務改善命令が出され、従わない場合は営業停止などの行政措置が取られる可能性もあります。他にも大阪市や名古屋市、福岡市など主要都市はすべてグリストラップの設置義務について定められた条例があります。

さらに、設置だけではなく、排水される水の品質について、公共下水道を守る目的の「下水道法」と、環境保全が目的の「水質汚濁防止法」が定められています。排水に含まれる油脂や有機物等の含有量を、「ノルマルヘキサン」と呼ばれる物質を使い測定します。どちらの法律も「ノルマルヘキサン抽出物の含有量が30mg/L以下」と定められており、違反の罰則も規定されています。

法律・条例 内容 具体的な基準 罰則
建築基準法 排水設備の適切な処理 グリストラップの設置義務 1年以下の懲役または100万円以下の罰金
国土交通省告示第243号 グリストラップの具体的基準 設置場所、構造、容量、清掃頻度の規定 告示自体に罰則はなし
下水道法 公共下水道の保全 油脂分30mg/L以下 1年以下の懲役または100万円以下の罰金
水質汚濁防止法 環境保護 油脂分30mg/L以下、排水量50m³以上の施設は届け出義務 6カ月以下の懲役または50万円以下の罰金
東京都条例 飲食店の排水処理 すべての飲食店にグリストラップ設置義務 業務改善命令、従わない場合は営業停止

ここまで法律や条例について詳しくお話しましたが、店舗オーナー様や厨房担当者様がすべて理解する必要はありません。大切なのは、業務用の厨房では必要に応じた大きさのグリストラップを設置する義務があり、汚水を流さないために定期的に清掃をする必要がある、ということ。グリストラップについては定期的な検査などは定められていないため、今は法律や条例を守っていない店舗も多数あるのが実情ですが、行政のチェックが入った場合は業務改善命令や営業停止命令がくだされる可能性もあるということは知っておいたほうが良いでしょう。私個人的には、「法律で決められているから」という理由ではなく、単純に地球の環境を守るために、グリストラップの適切な設置と清掃の重要性を広めたいと考えています。

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